top of page

ミステリオ 2ndEP「エスケピズム」リリースインタビュー

大阪を拠点に活動するラッパー・ミステリオの2ndEP「エスケピズム」が1月20日にデジタルリリースされた。

前作である「TERIO FRIENDS」から2ヶ月足らずでの今作リリース。内容は、ミステリオの巡らせた想像力が溢れていて、正に"エスケピズム=現実逃避"というタイトル通りの世界観が詰まっている。

しかし、現実と理想,想像の世界はいつ何時も表裏一体である。このEPから節々と感じれるミステリオの悲哀がそれを物語っているだろう。普段の陽気なキャラクターとは一線を画した彼を垣間見れるのも、制作を増すごとに広がっている音楽性の幅を示している。

場所はミステリオがスタッフとしても勤務している、大阪のHIPHOPには欠かせないスポットである一二三屋。制作へのモチベーションになったきっかけや、重ねる中で見つけた物とは。現在のミステリオを紐解いた。


文・構成 kyotaro yamakawa(interviewer)

写真 ibuki nishiura Instagram→@ibuki_tricking

撮影協力 一二三屋(大阪市中央区西心斎橋1-8-16中西ビル4階)

ー 自分で人生を変えに行く動きをした事が初めてでした。  挫折エグいってほんまに思いましたけどね。



ミステリオ2ndEP「エスケピズム」



・前作「TERIO FRINDS」から2ヶ月足らずのリリースとの事ですが、現在までの制作を進めているきっかけなどはあるのでしょうか?


「19年に1stをリリースできたんですけど、そこから燃え尽き症候群になってしまいまして。曲を出さない、というより書けない状況になったんですよ。その時期に、あるラッパーの友達と遊んでる時に『(音楽で)どんぐらい稼いでんの?』みたいな話になって。その人は僕より有名な人なんですけど、想像を絶する額の答えが返ってきて。それ聴いた時に『俺、曲も書かずにバイトばっかで何やってんねやろ』って思ったんです。

よく行ってるAKIO STUDIOのAKIOさんにも有難いお叱りとかも受けて、週1でもスタジオに通って制作やレコーディングをするっていう習慣に切り替えていきました。歌詞を書くのはスタジオじゃなくてもできるし、もし書けなかったらスタジオで書いて制作していくっていう。それで溜まっていったものをリリースしたのが、前作の形になりました。前作の頃から、今作のソロの方でも制作は進めていたので11月と1月で出した形にはなってますけど、作り溜めていたものを出しただけなので何にも凄くは無いです。」


・少し振り返ってみて、1stの「ライフイズギャグ」を制作している頃の方がミステリオさん自身としても調子が良い状態でしたか?


「いや…アルバムを出した当時は人生で一番辛かったですね。これはあまり他で言ってない話ですけど、あの当時は食欲もないし睡眠も取れなかったりで、結構辛い中でのリリースだった事を覚えています。僕が悪いんですけどね。あれ11曲収録なんですけど、その制作を3,4ヶ月で詰めてしまったので。そういうしんどいマインドでいくと、今作ってるもので成功する事しか信じれなくなるんですよ。その期待しすぎた結果で、売れなかった事への反動が強くて。そして、さっきも言ったように燃え尽き症候群になってしまいました。」


・ミステリオさんにとって制作が酷なイメージになってしまったんですかね。


「それも今となっては、間違いやったなと気づきましたね。やっぱり楽しい気持ちで制作しないと、楽しい感情をヘッズのみんなに与えれないんで。逆に、悲しいマインドじゃないと悲しい人には共感できないですし。今はそういうシンプルで当たり前な事をキープできるように努めています。」



・今作「エスケピズム」についてですが、まずタイトルが秀逸ですよね。制作段階からこの”現実逃避”というパッケージの想定はあったのでしょうか?


「まず、ソロとして自分にできる事を模索しました。やはり面白いっていうイメージが僕を知ってくれてる人の中ではあると思うんですけど、今回はそういうマインドにはなれなくて。それ以外を考えた時に、妄想で韻を踏む事が僕は得意で。それで最初に制作し始めたのが”妄想ガールフレンド”でした。そこからEPに仕上げるなら関連性が要るし、現実逃避ってテーマを作って制作し始めました。」


・今作の全体的な感想として、現実逃避というテーマが前提としてある中にミステリオさん自身の現実が表裏一体として透けて見えてきたのが印象的でした。

まず一曲目の”妄想ガールフレンド”。ご自身としてはラブソングにどんなイメージがありますか?


「ラブソングには憧れがあります。例えば、Freak's'(ミステリオが所属しているクルー)の”POP LOVE”とか。ただ、僕は片思いでしか恋愛をした事が無いので中々書けないんですよね(笑)。なので、失恋ソングとか今回みたいな妄想しか書けなくて。この曲の人のイメージが理想です(笑)。」


・続いて、2曲目の”少年メモリー”。この曲は恐らくHIPHOPと出会う前の、少年〜青年になるまでのご自身を描いた一曲になると思うんですが、HIPHIPと出会う前のミステリオさんってどんな人でしたか?また、HIPHOPと出会って変化したことはありますか?


「出会う前も、人間性としてはそんなに変わってないとは思います。調子乗ってました(笑)。大阪の堺出身で、流行ってたのはレゲエやJ-POPが中心でした。今でこそXLサイズ着てますけど、当時はギャル男じゃないですけどSサイズとかピチピチの服を着てたこともありましたね(笑)。

出会ってからの変化は、初めて人生を賭けて何かに打ち込んだことですかね。部活とか友達が入ってたからやってたっていうのはありましたけど、自分で人生を変えに行く動きをした事が初めてでした。挫折エグいってほんまに思いましたけどね(笑)。



・3曲目は、CRDさんを客演に招いた”宇宙トリップ”です。ラッパー、トラックメイカー、エンジニア、最近ではYouTubeでも活動しているCRDさんですが、いつから親交などあるのでしょうか?


「CRDさんとは出会って5,6年ぐらいになりますかね。キャリア初期から目をかけてもらってます。きっかけは『OVER THE TOP』っていうイベントで、誰にでも話しかけるタイプの僕が『お兄さん!バトルやりましょうよ!』って声かけたんです。12個上の人なんですけど(笑)。そこでバトルやったり、別のサイファーで出会ったのもあったりして仲良くなっていきました。

そこからCRDさんの方から自宅でのRECにも誘ってくれたこともあって、まだ何にも持ってない僕とK-razy君にビートを提供してくれて2人でEPを制作した事もありました。それがソロでの初めての作品になりますね。ちなみに1stに収録してある”結婚したい”もCRDさんがビート提供ですね。

今回はCRDさんにビートもヴァースもお願いして、プリプロついでに何回かミーティングも重ねていって制作していきました。詳しいことは、CRDさんがYouTubeで話されていますのでそちらも宜しくお願いします。」


・続いて、4曲目は"今だけsad"ですね。妄想を終えてた後に待ち受けるネガティブというイメージの曲でしたけど、どういう心境で制作されましたか?


「冒頭でも言った、友達と自分との比較であったり当時の好きな女の子に彼氏ができたり等があって。僕はポップな曲より、ネガティブな感情を元にして作った曲の方が自分を表現しやすいので制作していきました。

ネガティブな僕っていうのを中々信じてもらえないんです。多重人格じゃ無いですけど、ポジティブもネガティブも半々で自分の中に存在してて。」



・僕も過去の記事の中で書いた事があるんですけど、ミステリオさんは陽気なキャラクターのイメージの反面、伸びる影のように悲哀が凄くて。それはライブなど面と向かったら感じれる事だと思っているんですが、ミステリオさんの違った一面がこの曲には詰まってますよね。

そしてラストトラックである"今夜だけは"。この曲は4年前に制作されたものと聞きましたが、このタイミングでEPに収録することになった経緯は?


「そもそもこの曲を作ろうと思ったきっかけなんですけど、4年前の当時pekoさんが主催していた『アマチュアナイト』っていうイベントに僕もレギュラーで出番をいただいていて。梅田の人達って何でもできるんですけど、その中でもこのイベントは"エモチュア"って言われるぐらいエモい時間が特に最高でした。

"メイドインパンチライン"とかやっていた当時の僕って全然エモい曲が無くて。で、俺もエモい曲がやりたいってなった時に自分の中では理想がありました。それが浜ちゃんの"WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~"やったんですよ。そのインストをゲットして、アマチュアナイトの10周年でやるつもりやったんですけど中々難しくて。DJ Ken君に連絡して、浜ちゃんの曲を元ネタにして作ってもらったのが"今夜だけは"だったんですよ。

この曲はYouTubeだけに出す予定で準備してました。ただ、昔『Freak's'pot』っていうイベントで"今夜だけは"のRemixをAKIO BEATSでやったことがあって。そのBeat Remixの方の"今夜だけは"は、"WOW WAR TONIGHT"と同じリリース日の3月15日にリリースする予定なんですけど。Freak's'potでやっていた"今夜だけは"のライブの動画をインスタで見た友達から、原曲の方はリリースしないの?って連絡があって、このタイミングで出す事に決めました。ちなみに、2ヴァース目はダブルミーニングも沢山あるので見つけてみてください。」





ー 今の僕を応援してくれている人の為にも頑張りたいです



・そういう背景があったとは驚きでした。しかもクラブに行き辛い日々が今続く中で、リスナーの人にはアンセムの1つになるような楽曲ですよね。

当時からスキル面でのミステリオさんのラップの核を担う要素は、そこまで変化はありませんよね。

「変わってないというか、できないんですよね(笑)。

前にアマチュアナイトでドイケン君(KennyDoes)が『K-razy、お前は色んな技磨け。ミステリオ、お前は1つの技だけ磨いていけ。』って言われた事があって。これほんまに言ってる通りやと思います。」



・確かに。ミステリオさんの個性はオリジナルだなというイメージです。

それと同時に、作品を出す度に音楽的な部分も磨いていってるようにも見受けられますね。


「やっぱり自分の欠点を直していかないと成長ってできないですよね。僕って全然歌とか歌えなかったんですけど、それやったら自分のキーを探して歌えるようにしていく、みたいな。やったらやった分だけ活きていくので、これからも成長していきたいですね。」



・ラッパーとして近い目標、遠い目標ってありますか?


「近い目標は、半年連続リリースをしようと思っています。そして半年後の6月にツーマンもしくはスリーマンするのが近い目標ですね。KZさんがやってるSOLOISTのパクリっすね(笑)。KZさんにも相談したら、良いことはパクっていこうって言ってもらえましたし、ゲストで呼ばれても20〜30分が多いんですけど、こんだけリリースしたら60分やってみたいなっていうのもあるので。

そのイベントが終わったら、僕は一度ストックを作る期間に入ろうと思っているので。そこで出来上がった曲は、また年末ぐらいにリリースできたらと思っています。フリースタイルとかで人気出て早くにファンがついてくれた分、減るのもめっちゃ早かったんですよね。なので、今の僕を応援してくれている人の為にも頑張りたいです。

遠い目標は、お金じゃ無い要素があることも分かった上で稼ぎたいですよね。ラップ一本で。ほんで、ずっとラップしときたい。細かい目標って言ったら色々あるんですけどね…芸能人とLINE交換するとか(笑)。これ最後なんで、ボケといた方がいいですかね。遠い目標は山本舞香とLINE交換で。”山本舞香とLINE交換”は武道館より夢あるんで(笑)。とりあえずCreepy Nutsと仲良くなる事から始めます!」


・”山本舞香とLINE交換”は結果的に儲かってそうですね(笑)。

というわけでインタビューは以上になります、ありがとうございました!


「ありがとうございました!」






文・構成 kyotaro yamakawa(interviewer)

写真 ibuki nishiura Instagram→@ibuki_tricking

撮影協力 一二三屋(大阪市中央区西心斎橋1-8-16中西ビル4階)

0件のコメント

Comments


bottom of page